白神山地の麓、雪深い山村集落の庭。シンボルは庭の中央にある柿の木と、背後にある大きな栗の木
米搗き臼、小屋の土台だった石、土木工事の際に出た玉石、さらに作庭時に土を掘り出た石。それらを洗い、選び、組み、敷き、積んだ庭。苔の土塁も残土を使った
テラスの敷石は昔の建物の土台に使われていたもので、大谷石に似た地産のゼオライト系の石。石質は柔らかく加工しやすいためこの地域で多く使われていた
道路沿いの庭は家の中からは見えない。それならと、この庭をご家族やご近所の方が憩える「縁側」にした
残土は場外へ出さず、土塁を築いて苔を張りテラスの背景に。既存の石を斜面から顔を出したように据え、ベンチを作った
テラスの下には水琴窟があり、小さな水鉢に柄杓で水を入れるとこぼれた水が地下で音を奏でる。
高さや形を変えて据えた石は、子供もお年寄りも、ご家族もご近所さんも、それぞれ皆が座りやすいベンチ。有り余る石をどう使おうか、それはとてもとても贅沢な悩み
石臼の縁は、「がっこ茶っこ」のテーブルになる。
その場所にある石や木、土。ひとつひとつの材料を大切に見立て、向かい合うのも作庭の醍醐味
「柿の木の下のテラス」の隣、大きな栗の木を主木にした「栗の木の下のテラス」。
木の下には太い枝で支えただけの伐採木のベンチがある
落ち葉焚きのときの腰掛にちょうどよいこのベンチは、真夏の草取りのひと休みにも。この庭の主の腰掛は多いほどよい
正面の石は水を掬う際の腰掛。山を歩いていたら水場を見つけ、傍らの石に腰掛け水を掬い一息入れてまた歩きだす、そんなイメージで石を組んだ
柿の木のテラスの水場と栗の木のテラスの水場の正面が重ならず、また水の景色が二重に視界に入らないようするため通りをずらして配置、降り蹲風に掘り下げて配置した
裏庭に埋もれていた流しを洗い、内側が傷んでいたためひっくり返して腰掛に。奥のベンチは主が水場を眺めるときのための特等席
石張りの目地には、この場所を掘って出てきた黄土色の粘土を使った。粘土目地は苔も乗りやすく、自然に景色に馴染んでくれる
近づいてみて初めてその存在に気付く、水の音に誘われて奥に行ったら沢があった。そんなふうに見えたら嬉しい
「へば、まんず」。そんなふうに日々を暮らし、使い、遊び、そして庭は自然と同化してゆく