山に還る庭

新緑の頃、完工直後の庭
新緑の頃、完工直後の庭

里山にある古材を活用した木の家。のどかで優しい、日本の風景だ。
「雑木林の中で、小鳥のさえずりを聴きながら暮らしたい。そして削られたこの土地の里山を、ここに再生したい」
それが、この家に住まうご家族の願い。

工事後の庭の様子

小さな森の集合体が家を包み込む。ここは、庭でもあり、山でもある。
植えられた樹々は成長し、葉を落とし、土を肥やす。そして下草が育ち、庭は徐々に山に還ってゆく。

山の樹々を植えた里山の風情の庭

樹を寄せて小さな森を作り、森を集めて山の景色をつくる
樹を寄せて小さな森を作り、森を集めて山の景色をつくる

木の家に山の樹を植える。林を作り、林を集めた森を作り、庭の境を超えて里山へと繋いでゆく

写真

沢を掘って地水を呼び込み、掘った土を盛り上げて山にする。
粘土質の土でも捨てずに改良し、土地で育つものを植える。 山にあるように。

室内から見る盛り土をした二つの森
室内から見る二つの森

窓越しに森を見る
リビングから、窓越しの景色

名前を書いた札をエゴの樹に取り付けた
完成後、樹の名前を書いた札をお持ちし、ご家族とともに取り付けた

無剪定で育てた自然木を山の植生のように植えれば、樹は樹なりに育っていく。
寒さや雪で鍛えられた樹木には雪囲いも要らず、障るものが無い所では剪定も不要。
樹木には極力手を入れず、自然遷移に任せていく庭。


春、芽吹きの庭
芽吹きの庭 ©koshimaro

カエデが葉を開き、ブナが芽吹く庭

オオカメノキの花
オオカメノキに花が咲いた ©koshimaro

雪解け後の春の庭
©koshimaro

敷地は、里山の裾野に広がる平地。山を切り崩した後の造成地だ。 工事は固められた土をほぐし、作り、水を受け流すことから始まった。

山ツツジ咲く春の庭
山ツツジ咲く春の庭©koshimaro

里山にある家に、里山にある樹木を植える。 その土地に生える身近な樹種を、山にあるように植える。

山藤の花が満開に咲く
敷地内にある山藤 ©koshimaro

無剪定のコムラサキにかけられた鳥の巣
無剪定のコムラサキに鳥が巣をかけた ©koshimaro

オオカメノキの実が赤く色づく
オオカメノキの実が色づく夏 ©koshimaro

冴えた青が美しいオオシオカラトンボ
冴えた青が美しいオオシオカラトンボ ©koshimaro

庭に咲くフジバカマの花
フジバカマ ©koshimaro

萩とオミナエシが咲く初秋の庭
©koshimaro

萩とオミナエシが咲く初秋の庭

ガマズミの実が赤く色づく
ガマズミの実が色づく ©koshimaro

ブナに寄り添うホトトギスの花
ブナに寄り添うホトトギス ©koshimaro

コムラサキの紫色の実
コムラサキの実 ©koshimaro

秋の山に踏み入ったかのような庭先の紅葉の景色
©koshimaro

秋の山に踏み入ったかのような庭先の景色

庭に置かれた原木から出たナメコ
©koshimaro

雑木林に囲まれ、里山暮らしを楽しむご家族。庭にはさまざまなキノコの原木が置かれている。
敷地の中には広大な畑と果樹園もあり、農園として開放している

落葉した後に残ったウメモドキの赤い実
落葉した後に残ったウメモドキの実 ©koshimaro


冬、庭に雪が積もった
冬晴れの庭 ©koshimaro

柿の木に雪が積もる
下半分は人に、上半分は鳥に。柿の木の収穫を分け合う ©koshimaro

柿の実をついばむツグミ
©koshimaro

柿の実をついばむツグミ。樹で熟した実は甘く、この柿の木は晩秋から初冬にかけての鳥たちにとって最高のレストランになる

風雪の中、コムラサキの実をついばむツグミ
風雪の中、コムラサキの実をついばむツグミ ©koshimaro

雪化粧の庭
雪化粧の庭 ©koshimaro

びっしりと付いたウメモドキの実に雪が積もる
びっしりと付いたウメモドキの実に雪が積もる。紅白の対比が美しい雪の庭 ©koshimaro

ウメモドキの実を銜えるウソ
ウメモドキの実を銜えるウソ ©koshimaro

コムラサキの氷華
©koshimaro

冬、明け方厳しく冷え込んだ日は良く晴れる。日の出とともに消えていく氷華を見るために早朝の庭を歩く

コムラサキの氷華
©koshimaro

細い枝から出た無数の繊細な氷の柱が朝日に輝く。厳冬の日の美しい自然の造形

良く晴れた冬の日、雪景色の庭
森に囲まれた雪景色の木の家 ©koshimaro

凍り付く樹々たち
凍り付く樹々たち ©koshimaro

月夜の雪景色の庭
月夜の庭 ©koshimaro

早春の重い雪を耐え枝を撓らせる山の木々たち
早春の重い雪に耐えて枝を撓らせる山の木々たち ©koshimaro

早春、雪解けがはじまる
春はもうすぐ

自然勾配の地形は地表や土中の水はけがよく、雨水や地下水が自然に流れていく所は樹木もよく育つ。
そんな自然の沢の流れや植生の様子を参考に、里山に溶け込む風景をつくることを目指した。


盛り土で作った山の谷川に設けた柵(しがらみ)
山の谷川に設けた柵(しがらみ)

石組は無いけれど、土の起伏が変化をつくる。
土留めの石積みは無いけれど、土が崩れて止まった角度にすれば、山は崩れない。
角度が強ければ、剪定枝を束ねて土を留め、枝の中から水を浸み出させる。

早春の庭
早春の庭

目隠しの塀は無いけれど、周囲に盛った土の山と、自然に生えるススキが塀になる。
庭という括りを外し、自然界が行う造成を取り入れ、この土地に山をつくり、育てる。

自生したエビネ
自生したエビネ ©koshimaro

白いホタルブクロが咲く山の風情の庭
ホタルブクロが咲く山の風情の庭 ©koshimaro

再生途中の土に葉が落ち、草が生え、それらは枯れて土に還り、再び芽吹く。そうして、徐々に雑木林の風情が増してゆく

ホタルブクロの花
©koshimaro

ご家族の夢は大きく、まだまだ膨らむ。 木々の成長と共に、少しづつ、この場所が里山そのものになっていくことを願っている。

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