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「森の秘密基地」

暇暇に庭を試作。

その地その家の木と石と土を使い、風土と調和する庭をつくるというのが自分の理想だ。
でも、まだ完全にはその形を実現出来ないでいる。
自分の理想のために庭をつくるのではけしてないが、作り手ならば誰にでも、目指す形や考えはあるはずだ。
仕事で実現できなければ自分で作ってみればいい。
そんなことでつくってみたのがこの庭。

コナラ、クロモジ、ヤマモミジ、アブラチャン、ガマズミ、アオキ、シダ、地苔・・・全てが周りの里山にあるものばかり。
土壁と砂利の洗い出しも、そこから出た土でやった。
周囲の里山に溶け込み、風土と同化する庭。
ずっと、こんな庭をつくりたかった。

木々のほとんどは、山から畑に飛んできて勝手に生えたもので、春先に根回ししていたもの。
山では、林道建設や治山工事などで伐採される木が多いと聞く。
森の中では自然淘汰で枯れていく木もある。
そんな木の命を助けながら庭や公園に生かしてあげることは出来ないだろうか、街に山の木を植えることで街と山を繋ぐことは出来ないか、山の木の心地よさを市民に感じてもらうことで、自然の素晴らしさを伝えることはできないだろうかと、以前から役所などに提言していた。

田舎ではまだ、仕立て木やキレイな花の咲くものが優先され、自然樹形の山の木を植えることは少ない。
ブナは漢字で「木じゃ無い」と書き、山の木は「雑木」というが、山の木を庭の木としてみる風潮は田舎には無い。
実際の庭づくりで山の木を使うのは露地ぐらいではないだろうか。

ブナは世界遺産の代名詞にもなり、一躍人気樹種になった。
同じ山の木でもモミジやマンサク、ナツハゼなどの花、葉、実を楽しめる木などは農家の庭先でもよく見かける。
が、すぐそこにあるコナラやクロモジなどを庭に植える人はまずいない。
ガーデニングの流行で関東から流れてくる格好のいい雑木も使われるようになってきたが、それらのほとんども、元をただせば関東などの山に生える山の木で、それを畑で栽培した物だ。

流行だからと、ガーデニング本にあるような雑木の庭を勧めようとは思わない。
白神山地で有名になったからと、ブナを勧めようとも思わない。
なぜ雑木なのかをまず考えたい。
柔らかな枝先や美しい幹の線、木漏れ日、木陰、そよ風、小鳥、落葉、住宅や地表面の温土緩和、山の木が庭にもたらす効果はたくさんある。
奥入瀬や白神山地のブナ林の雰囲気を庭で体感できたらなんと素晴らしいことだろう。
そんな効果の中で暮らせたら、心豊かな暮らしが出来るのではないかと思う。

山の木の自然の営みを見るのは楽しい。
冬芽、芽吹き、花、実、紅葉、落葉、家に居ながらにして山の風情を味わえる。
山の木の楽しさを知ると、山に行きたくなり、自然の素晴らしさや恩恵を感じる。
こんなふうに、山の木を植えることは、身近な自然の素晴らしさを人々に伝えるという効果もある。
そのためにも、庭、公園を問わず、街に山の木を植えたいと思う。

 

森の秘密基地

 

「森の秘密基地だね!」
この庭を見た施主(長女)の第一声。
やはり、人のいる庭はいい。
それが森の中なら、なおいい。
庭は木の形だけで見るものではなく、そこに流れる空気や雰囲気を楽しむものだと思っている。
木は庭になくてはならないものだが、仕立て木のように個々の存在感を主張しなくてもいい。
ただそこに、山にいるように、森のように、穏やかに、包み込むようにいてくれればいいと思う。
庭で暮らすための庭をつくりたい。

 

森の秘密基地で集う

 

※この庭の様子は、HP「庭が完成するまで」『そこにあるもので庭を創る』「作庭集」『森の秘密基地』でもご紹介しています。

 


 

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