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「朝茶」

2011/09/28

こちらではあまり聞かないが、「朝茶はその日の難逃れ」ということわざがあるそうだ。
朝にお茶を飲むと災難から逃れられたり幸運が訪れるなど、朝茶を飲めばその日はいいことがあるといわれているのだそう。

 

お茶に関する言葉では、当地には「いっぺ茶っこはやざね(一杯茶はダメ)」というものがある。
他所でお茶を出されたら、一杯だけで帰るのは失礼とか、一杯茶は縁起が悪いという意味で使われる。
これは、お茶を振る舞う側が言う言葉だが、本意は「ゆっくりくつろいでください」ということだと思っている。

 

朝茶といえば、見習いの頃、事務所に行くとみんなでお茶を飲み、その日の段取りなどを話したものだ。
また、仕事に行けば、「まずお茶をどうぞ」とお施主さんが温かいお茶を入れて下さり、それをいただいてから仕事をしたりした。
見習いは、縁側から庭を見る機会が少ない。
縁側でお茶をいただきながら庭の様子を眺められるこの時間は、とても有り難い時間だった。

 

お茶を飲むと気持ちが落ち着く。
植木屋の仕事はけっこうな危険が伴うから、朝茶は、心にゆとりを持ち、今日一日を安全に仕事をするため、という儀式のような意味合いもあるのだろう。

 

数年前、朝の出がけに若衆が事故に遭遇、その時から朝茶を始めた。
事務所もない貧乏植木屋、落ち付いてお茶を入れている場所などもなく、掘立小屋で水筒のお茶を皆で飲んでいた。
最近は早出の仕事が多いせいか、自販機の缶コーヒー。
それも行きがけの車の中で飲んでいる。
夏はアイス、秋はホット、今日はどんな銘柄にしようかと自販機の前で考えるのもけっこう楽しい。

 

「難逃れのお茶」は、お茶は体に良いからお茶を飲むということからすれば外れるかもしれないが、心にゆとりを持つという意味では、コーヒーでもいいかなと思って飲んでいる。

 

バタバタと慌ただしい朝は余裕を失いがち。
交通事故が多発している今、せめて缶コーヒー1本の余裕を持ち、安全運転を心掛けよう。

 

朝茶

適当な写真が無いので、抹茶の写真ですみません。

 

 


 

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