創作料理店の庭の改修を行いました。
施工する場所は玄関脇の空間で、透かしの黒い板塀で庭と通路とに仕切られています。
庭は、道路やアプローチなどの外からの視点と、店内の庭に面する二つの席、玄関、の3つの場所からの視点を持ち、前庭と中庭を併せたような役割を持ちます。
これらの条件を満たしながら、店の雰囲気に合わせた空間を考えました。
店の外観です。上が改修前で下が改修後。
改修前は、通路と庭がフラットな状態で、黒砂利が敷かれ、観葉植物などが置かれていました。
板塀の下に石積みを施し、景色にメリハリを付けます。板塀の仕切りで庭を終わらせずに、通路まで庭をはみ出させました。 これで、中からしか見えない庭に前庭の役目を持たせ、店内への期待感を創出させます。
庭奥から曲線の洗い出しの帯を走らせ、狭い庭に動きを出します。 帯を石積みで終わらせずに、割り込ませながら通路まで降ろすことで、庭に面白さを出しました。
店内からの見せ場として作った、縁先手水鉢風の水鉢です。手前の石積みと呼応させるように、同質の石で積みました。 石は白神山系の割栗石です。
中から見たところです。庭に奥行きが無いので、石積みによって庭の地盤を高め、さらに高さのある水鉢を使用することで、店内の部屋からも庭に目が行くように工夫しました。
座る場所で庭の眺めも変化します。
水鉢を側面から見てみます。夜空を表現した庭なので、三日月を意識して石を積みました。
水鉢は、大理石の板石を加工し、重ねたものです。わずかな深みの水面ですが、水があることで庭に清涼感が漂います。
剪定したナンテンの葉を浮かべて見ましたが、季節の花などを浮かべてみるのも楽しいものです。筧は、現代感覚の水鉢に合わせ、シャープで冷たい感じのするステンレスを使いました。
水鉢の形は、店名のロゴと合わせた四角い形。壁の四角いロゴが庭に降りていくというイメージで作りました。
大理石の石自体にも模様があるのですが、外の明るさや店内の照明の具合で水鉢の色が微妙に変わります。水が落ちるとまた変わる。楽しく食事しながら、そんな変化も楽しんでいただけたらと思います。
庭に面するもうひとつの部屋からです。明るい時と暗い時ではまた雰囲気が変わります。
こちらの庭のポイントはガラス玉です。
玄関から庭の側面を見たところです。庭の全体構成がわかります。
あとがき
こちらのお店は、能代市東町の「酒食彩宴 粋」様です。
洒落た内装の個室が多く静かに会話が楽しめますので、女性客にも人気のお店です。
ジャズの流れる店内で落ち着いて料理を楽しめます。
皆さまも是非一度、お出掛け下さい。
※こちらの庭づくりの様子は『庭が完成するまで2 商業空間の庭』の方で製作過程をご覧いただけます。
2007年8月作庭 能代市