「柿の木の下で Part2」

 

柿の木の下で Part2

2006年7月作庭 藤里町

 

昨年作庭させていただいた「柿の木の下で」の庭も無事一冬越すことが出来ました。
こちらの庭は、手水鉢と砂利以外は全て現場の土中から掘り出した石で作った庭でしたが、今回は、昨年使い切れなかった石と下草を利用して、空いていた栗の木の前の部分に手を入れさせていただきました。
昨年作った部分との調和を考えながら、柿の木と栗の木を繋ぐというのが、今回の作庭のコンセプトです。

 

 

 

完成

 

苔と石張りのテラス

 

苔と石張りのテラスです。昨年作った「柿の木のテラス」に対して「栗の木のテラス」と名付けました。テラスというか三日月型の延段というか、始めは特に意識はしませんでしたが、なんとなく、この間畑で実験した三日月の庭に似てきました。当初は円形のテラスを作るつもりでしたが、筧の立ち上がりの部分が少し窮屈になって石張りをやめたら、月の形になったという偶然です。

 

 

反対側から見る

 

反対側から見るとこうなります。途中から三日月の形を意識しだして、先端の部分に向かって細くなるようにしました。内側はかなりランダムに張ったので奇麗な三日月型ではありませんが、石張りと苔との関わりを自然に見せたくて、わざとこんな感じにしました。

 

 

テラス全景

 

粘土目地

 

石張りの目地には粘土を使いました。通常、丸い玉石で畳むと、どうしても目地が広くなってモルタルが目立ってきます。前回はほとんど厚みが10センチ以上の石を使って目地も狭く深目字に出来ましたが、今回は少し薄手の石も使ったので、目地の深さは1cmぐらいです。自然な仕上がりで目に優しく、穏やかに個々の石を繋ぎたいと思っていたのですが、降り蹲踞を掘った時に黄土色の粘土が出たので、それを使ってみることにしました。草は生えずに苔は乗る。それも粘土目地のいいところです。やってるうちに陰影を出したくなって、所々を山目地にしてみました。

 

 

降り蹲踞風の手水鉢・1

 

降り蹲踞風の手水鉢・2

 

テラスの中には既存の水掘れの石を使って、降り蹲踞風に手水鉢を据えてみました。「降り蹲踞」とは、文字通り降りて使う蹲踞のことですが、左側の役石に見える石は腰掛なので、厳密には「蹲踞」ではありません。ここに座って水をすくって遊びます。そんな意味では、役を持たせた石なので「役石」ということにはなりますね。「山登りの途中で、沢に降りたら水が流れていた。ちょうどいい石があったので一休み。一息ついたのでまた山に登る.。」といったイメージです。

 

 

柿のテラスのベンチから見た景色

 

柿のテラスのベンチから見た景色です。降り蹲踞の上に水鉢を低く据えたので、ここから見ても何があるのかわかりません。視界に手水鉢が二つ見えるとお互いが引き立たないということもありますが、近づいてみて初めてその存在に気付く、水の音に誘われて奥に行ったら沢があった、という感じに見せたいと思いました。庭にちょっとした驚きがあると、訪れる方も楽しくなります。

 

 

手水鉢の脇を通って向こう側にも登れる

 

手水鉢の脇を通って向こう側にも登れるようにしました。同じ道を戻らずに通り過ぎていく「降り蹲踞」というのはまだ見たことがありません。蹲踞のように見えてまったくその役を果たさないというのも面白いかなと思いました。

 

 

筧使いの手水鉢

 

柿のテラスの手水鉢は自噴式にしましたので、こちらは筧使いにしました。近くを流れる川に行けば流木もあるのですが、この家には栗の木がありました。あるものを使うというのは生活の中での自然な行為です。そんな考え方でいけば、その地に根ざした土着の庭になると考えました。結構長持ちすると思いますが、朽ちたらまた剪定した時の枝で作ればいいと思います。筧周りには既存のシダやミズを植えて、沢の雰囲気を出しました

 

 

土台の石を利用したベンチ・1

 

土台の石を利用したベンチ・2

 

このテラスにも、前回同様、土台の石を利用してベンチを作りました。
ここが降り蹲踞を眺める一番の場所であり、この庭の「縁側」です。おばあさんがこのベンチに座って、庭を眺める様を想像しながら作りました。

 

 

もう一つのベンチ・1

 

もう一つのベンチ・2

 

反対側に、もう一つベンチを作りました。これも裏庭に埋もれていて今回発見した物です。昔の流しだと思いますが、内側が傷んでいたのでひっくり返して使いました。四角い形を斜めに据えましたが、石張りの曲線に対するアクセントになったと思います。

 

 

二つ目の苔の山

 

二つ目の苔の山です。昨年、残土を盛って形だけを作っていましたが、今回降り蹲踞を作る時に出た土をさらに盛り、苔のベンチよりも低く長く、広がりを感じさせるようにしました。前回同様、白神山地を意識しましたが、筧からの繋がりを考えて、少し石組と下草を絡ませました。作庭中、張ったばかりの苔が時々剥げていておかしいなと思いましたが、原因は猫のイタズラでした。この庭の苔にとってライバルは猫です。

 

 

柿の木のテラスから続く飛石

 

柿の木のテラスから続く飛石です。前回は途中で終わっていましたので、栗のテラスまで繋ぎました。だんだん飛石に使える石が少なくなってきたのと、栗のテラスとのバランスを考えて、前に打った飛石も直しました。

 

 

反対側から

 

反対側からもテラスに行けます。同じ打ち方では面白くないので、右側の伝いとは打ち方を変えました。テラス周りは、近くのプラントに同質の石を砕いた川砂利がありますので、それを敷きました。田舎の庭にしては奇麗に見えてしまうかなとも思いましたが、ぬかるみやすいことと、おばあさんの草取りの手間を考えてのことです。草取りを最小限にと言うのも、ご依頼の一つでした。

 

 

上から見る・1

 

上から見る・2

 

上から見てみます。 円と三日月で構成した庭ですが、今回もまた三日月が3つ増えました。平面の三日月が3つ(石積みの植栽部分が2つと石張り部分)、立体の三日月が3つ(苔の山が2つと余った石の山)と、6つの三日月があります。上から見ると、苔と石張り、砂利の関わりやコントラストがわかります。

 

柿の木の庭と繋ぐ

 

 

 

→作庭集

 

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