「三日月の庭」

 

三日月の庭

自社畑にて 2006年5月

 

自社の畑に作った試作の庭。2006年04月30日の日記「庭を考えるのは楽しい」に書いた庭で、テーマは「三日月」です。
割れた石臼を傾けてみたら三日月型になったのを面白く思いました。「柿の木の下で」の苔のベンチ以来、三日月のラインが面白いなあと思っているのですが、平面的な男鹿石の石張りと立体的な石積、立面で見る石臼と、それぞれ違う形の三つの三日月で庭を構成してみました。

 

 

作業開始

 

初めは水鉢を蹲踞風に石積みの前に置いてみたのですが、どうもしっくりきません。こじんまりとした空間の中では三日月の水鉢は息苦しくて、両者の良さを殺してしまっていたようです。実を言うと、この水鉢をやめて杯型の水鉢に変えようとしました。一人で寄せようとして抱えてみたら重くて、一度この円型の川石の上に置いて一息ついたところ、なんとなくいい感じに思えました。
円型の川石は石張りの月のラインに対してのアクセントだったのですが、台石としての役目に変わりました。こんな扱い方は初めてですが、オブジェ的な感じもして結構面白いなと思いました。

 

水を張ってみる

 

黒目の砂利を敷いて闇夜に浮かぶ月を表現したいとも思いましたが、那智石がありませんでした。 弟子の一人が「砂利の部分に水を張ったらどうでしょう。」と言っていたのですが、実は自分も、水に映る月、水に浮かぶ月をイメージしていました。石積み前の空いた空間はそのままに、水を張ってみることにしました。

 

水に映る月、水に浮かぶ月をイメージ

砂利の部分に水を張る

斜めから見たところです。

 

 

近景のポイントにスイセンを植えてみました

近景のポイントにスイセンを植えてみました。

上から見たところ

上から見たところです。ラインとコントラストのはっきりした庭は2階からも楽しめますね。

 

 

JRの五能線のパンフの景色

深浦町の追良瀬海岸

庭を作る時、いつかどこかで見た光景がイメージとして浮かぶということがあります。無意識に作って後で気付くこともありますし、始めから意識することもあります。作っている途中に、なんだかあそこの景色に似ているなと思うこともあります。
実は、この庭を作った後日、妻の実家(青森県深浦町)に行った折、義母が子供にくれたJRの五能線のパンフの景色を見て驚きました。その景色は、日本海に注ぐ河口の砂洲が、蛇行する川の侵食で三日月の形になっている(ように見える)というものでした。背後には岩山もあります。自分の実験した庭を拡大したような景色に思えて、本当に驚きました。義母にその場所を聞いて早速見てきましたが、そこは深浦町の追良瀬という海岸で、これまで何度も通った道沿いの景色で、何度も見ているはずの景色でした。そんな潜在的な景色が、心のどこかにあったのかもしれません。妻への愛情の深さがこの庭を作らせたということにしておきます(笑)。庭づくりって、本当に面白いですね。

 

 

完成

 

仕事の合間にコツコツやりましたが、正味、一人で3日で出来ました(石は砂ぎめですが)。
露地のような自然な庭も大好きですが、延段や石積みを造形的にあしらった、作意のある庭も好きです。奥行のない庭や中庭的な所などには、このスケールでそのまま作れそうな気がします。雪害対策で、植栽は、当地に自生するアオキとユズリハ、ムラサキシキブだけです。
左側の飛石と縁石は弟子の練習用として場所を提供しました。完成を待ちましょう。

 

 

 

 

→作庭集

 

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