「茶庭」とは?


 茶庭は「露地」とも呼ばれ、茶事を行うために蹲踞や飛石などを設けた茶室への道すがらの庭です。鑑賞美よりも実用美を重んじ「市中の山居」と言われるように自然の野山の趣を尊重します。

 最近は独立した茶室よりも住宅の和室を兼用するケースが多く、住宅の玄関を寄付にしたり待合の腰掛を石敷きだけにしたりして茶事の時だけ簡易の腰掛を置くなど、住宅事情や亭主の茶道観に合わせた作りになってきています。

 庭はどうしても建築の後になりがちですが、水屋や席入りの位置(沓脱石の場所)、寄付をどこにするかなど、限られた空間の中で主・客の動線が重なることなくスムースに席入り出来るように建築の設計段階から庭との関係を考えたほうが使い勝手の良い露地になります。

 茶道に精通し実際に席入りした経験のある設計士や大工さんなら庭の位置を配慮してくれると思いますが、事前に露地を作る予定をお話しし庭師を交えて計画することをお薦め致します。

 露地の作りには茶室ほど細かい約束事はないように思いますが、流派によって蹲踞や迎付の作法などに違いがある場合があり、それによって蹲踞の役石の具合や中門付近の飛石の打ち方などが変わってきます。

 また、流祖の考え方「わび」などの千家の茶道観と「綺麗さび」など武家の茶道観の違いにより、露地の風情が変わってくることもあると思います。

 庭師はそのような流派による違いやお客様の茶道観や好みを把握して設計・施工致しますが、この場合も茶道に精通し実際に席入の経験や露地の作庭経験のある庭師に依頼するのが無難です。




[露地づくりの基本]

こうした一般住宅の露地作りについて、私どもの基本としている方法をご紹介致します。



<設計>

・お客様の流派、好み、茶道観を伺い、茶室の格(草庵、広間)、寄付、水屋、台所の位置、二重露地か一重露地か(腰掛の数、中門の有無)などを確認致します。

・二重露地の場合は、露地口、腰掛、中門、蹲踞、沓脱石の位置、向き、飛石の大まかな動線を現場で示し、確認して頂きます。


<材料選び>

・作庭地付近の天然の石材や自生する樹種、またお客様お好みの樹種を基本に材料を選択、既存樹や既存石のある場合は、外露地、内露地の雰囲気に合わせて取り入れます。


<植裁>

・外露地は明るく山里の趣に。既存樹で当地近辺に自生しない木などは外露地に。
・内露地は、奥深い深山の趣に。いずれも、庭の様子が全て見通せないように、木の幹や枝葉で見え隠れするような配植をし、内露地から外露地へと穏やかに移行するよう気を配ります。茶室の花と重なる花物は避ける習わしですがお客様の好みによります。


<飛石・延段>

・外露地は迎付、腰掛での所作を考慮して、大きめの飛石や延段を織り混ぜます。「行」の雰囲気なら自然石と切石を合わせた延段などを。
・内露地の飛石は小振りにしますが、退席の所作を考えて両足の乗る物を使用します。延段を挟む場合は外露地が「行」なら「草」の延段に。いずれも歩きやすいように千鳥打ちにし、着物を着て草履で歩く歩幅にします。試し敷きの段階でお客様にも歩いて頂きます。


<腰掛>

 二重露地の場合、敷地に余裕があれば、外腰掛と内腰掛を設けます。主客石、連客石を敷き、簡易の腰掛を置く場合は、実際に置いて座り窮屈感がないか確認します。


<中門>

 四目垣や生垣などを庭の雰囲気に合わせた高さ、作りで仕切り、枝折戸などを設けます。枝折戸は内開きにし、迎付を想定して飛石を打ちます。


<蹲踞>

 流派や亭主となるお客様の使い勝手に合わせ、厳選した石材で組みます。
 水鉢はどこにでもある既製品は使わず、形の良い自然石の原石に穴を空けた物を使用します。使い勝手を確かめるために、実際に湯桶や手燭を置き、杓を使って、お客様に確認して頂きます。また、次客に背を向けないような向きを配慮します。

 鉢灯りとなる灯ろうは、ほど良く手元を照らすような向きで、火袋の高さ、水鉢からの距離を考えて据えます。

 筧は、古式では「水改め」の所作がありますので用いませんが、客数が多い場合、水音の風情を楽しみたい場合には用いることもあります。
 また、排水を利用して水琴窟にする場合もあります。
 客間兼用の茶室で部屋からの眺めを楽しみたい時などは、筧を付け、蹲踞の位置や向きを座敷からの鑑賞を意識して組む場合もありますし、その辺はお客様の好みで良いと思います。


<沓脱石>

 席入りする茶室の格、広さに合わせて落ち着いた根張りのある石を据えます。仮置きし、お客様に高さの確認をして頂きます。


<囲い>

 道路や隣家などの遮蔽に囲いを設ける場合も、庭の雰囲気に合わせた竹垣などにすると露地と調和します。自然な庭にそぐわないブロック塀なども竹垣で隠せます。建物と庭の格、雰囲気に合う竹垣を選択します。


<管理>

 露地は自然を尊ぶ庭です。剪定する場合は、その木の役割を考えて透かしの濃淡を決め、どこに鋏を入れたのかわからないように手入れします。


作庭集

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