「バードバスと山道の庭」

 

バードバスと山道の庭

自社畑にて 2006年9月

 

植木屋は現場で足袋を履いてナンボ。部屋の中で鉛筆持って唸ってると、頭が爆発しそうになります(笑)
やっぱり、鉛筆より鋏、消しゴムよりスコップ、PCより手仕事。そんなわけで、設計図面がなかなかはかどらないじれったさに、たまらず事務所を抜け出して、頭の中のイメージを、畑で仮組みしてみました。

 

 

バードバスが眺めのポイント

 

ご依頼は既存庭の改修でしたが、山の木や山野草が多いことから、バードバスを眺めのポイントにし、山道風のあられこぼしで回遊しながら、お手持ちの山野草を楽しむという庭を考えました。試作した庭は4uほど、実際の敷地はもっと広いのですが、庭のポイントとなるバードバス周辺に的を絞って作りました。
簡単に、砂ぎめで作りましたが、正味、一日掛かりました。

 

バードバスとなる水鉢は加工した物

 

バードバスとなる水鉢は、庭が、樹木が多く暗くなりがちなことから、地味な自然石ではなく、加工した物を使うことで、庭に明るさを出したいと思いました。

 

 

別の角度から見たところ

 

バードバスを別の角度から見たところです。台石は、傾斜の付いた長手の鳥海石を使いましたが、水鉢からこぼれた水がゆっくりと斜めに石肌を伝う様子が面白いと思いました。

 

 

水鉢には筧から給水、流れとなって、庭を横切る

 

水鉢には筧から給水しますが、その水が流れとなって、庭を横切ります。伝いは、流れの部分では沢飛びとなって、再びあられこぼしに変化、庭を回遊するように奥へと歩を誘います。

 

 

地際は土仕上げ

 

地際は土仕上げにしていますが、所々に苔の地こぶが出来たら面白いと思います。流れは粘土なんかで仕上げると、自然味が増すと思います。植栽はシャクナゲにユズリハ、ヤマモミジを配植、雪囲いの不要な自生樹のみでまとめました。ヤマモミジは、今春、畑に生えた実生の物をポット植えにしたものを使いました。雪で押された根曲がりのモミジが、雪国らしさを表わしています。

 

 

あられこぼし

 

あられこぼしは、白神山系の山石をランダムに畳みました。

 

 

あとがき

 

後日、お客様をこちらにご案内して、提案する庭の雰囲気を実際に見ていただきました。すべて仕上げた訳ではないので、これから現場で作る中で変わる楽しみも残していますが、素材の質感や庭の骨組など、紙の上(図面)からは感じることのできない、現実味のあるイメージをお伝えすることが出来たのでないかと思います。
ポイントだけを表現するのならば、図面を描くより試作するほうが時間的に早い場合もありますし(私の場合です)、新しいことをやる時などは実験にもなり、自分自身のイメージ作りや現場での円滑な作業の助けにもなりますね。
ただ、このやり方は、どんな依頼にも応えられるように、常日頃から素材をストックしておかなければ出来ないことです。仕事になるかどうかもわからない段階から、材料を購入して作るというリスクを負うほど会社の体力もありませんから、面白い素材を見つけたら、少しずつでも集めておくことが必要です。
貧乏植木屋にはなかなか大変なことですが、これは自分への投資でもあります。
手間は掛かりますが、こんなプレゼンの仕方もあってもいいかなと思いました。
当日は、併せてこれまで作庭した庭もいくつかご覧いただきました。
畑の小さな試作品ではなく、現実の庭のスケールで、私のクセ(作庭観)を感じてもらいました。

 

おまけ

 

下は,試作の庭と併せてみてもらった落書きのようなラフスケッチです。
試作したらだんだんイメージが膨らんできて、プレゼン30分前に,車にあった子供の水彩クレヨンで急遽描いたものです。多分,現場でまた変わると思いますが(笑)。

 

作庭イメージの絵

 

クレヨンの持ち主である画伯(5歳の娘)の講評は、「私の方が上手ね。でも、いいんじゃない。」でした(笑)

 

 

→作庭集

 

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