HOMEエッセイ・伝えたい心 > 「柏のベッド」

「柏のベッド」

林間の空気が好きだ。
冬枯れの樹木の幹の色と柔らかな枝先、春を待つ冬芽たち。
なんともいえない、冬の里山を歩く楽しみだ。
日の差し込む冬の山は、ひっそりと静かで明るい。
聞こえるのは、風が笹の葉を擦る音と、ギィギィと幹が揺すれる音、落葉や雪を踏む足音だけ。

どこかに隠れている獣たちの視線を感じながら、山道を歩く。
時折、ウサギの足跡と出会う。
アッチヘコッチヘ、戯れているような足取り。
前足をちょこんと出し、2本足で立ってアチコチ見回す姿を想像する。

この辺りにはカモシカやタヌキ、ノネズミもいる。
木のウロや、土に開いた穴を見ると、つい覗いてみたくなる。
穴の中は暖かそうだ。
柏の葉のベッドを見つけた。
中には誰もいない。
もう仕事に出かけたかな。

 

柏のベッド

 


 

→エッセイ  目次

Page top