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「嬉しくない当たり」

2006/11/21

免許を無くした。
運転免許証。
運転の免許だから、これが無いと運転できない。
植木屋の免許よりも大切だ。
その大切なものを、財布と一緒に落とした。
家に落としたんだろう程度にのん気に考えていたが、一週間経っても出てこない。
悪用されたら困るので、とうとう紛失届を出した。
今申し込んでも再交付までは2週間掛かるという。
「それが届くまで、仮交付証なんかはあるんですか。」と訊くと、更新とは違うから、無いんだそうだ。
不便なもんだなと、財布を落とした自分を棚に上げて思う。
「それでは困る」と言うと、免許センターに行けば即日交付を受けられると言う。
免許センターまでは電車とバスを乗り継いで2時間掛けて行かなければならない。
待ち時間を考えると、ほとんど一日掛かりになるが、2週間運転できないよりはマシだ。
それでも1日掛かりではシンドイので、妻に乗せて行ってもらうことにした。

受付すると、申し込み用紙に写真を添付するように言われる。
どこで撮ったらいいのか訊くと、「外に写真屋さんがあるから。」
あるから? 「写真屋さんがありますから、そちらでお願いします。」ぐらい言えないのかな、このご婦人は。
標準語で言われるから、よけい冷たく聞こえる。
私はアナタより年下だが、友達ではない。タメ口を聞かれる覚えはない。

そんなわけで向かいの写真屋に走る。
秋田弁で柔らかに話す写真屋のオジサンが、ものすごく親切な人に思えた(笑)。
実はこの写真、免許証に張る写真かと思いきや、これはただの本人確認をするための写真だった。
受付で、この写真と今ここにいる本人の顔を見比べて確かめるだけ。
免許証の写真は、後であらためてカラーで撮るので、この写真は使われない。
そんなんだったら、何も証明写真でなくても良い気もするが。

無事本人だと判り(当たり前だ。今撮ってきたばかりだ。化粧も変装もしていない。)、手続き完了。
係員のオジサンから3人一組で名前を呼ばれる。
新しい免許証が出来たらしい。
受け取りに行くと、窓越しに、名簿に印鑑を押すように言われる。
前のオトウサンがモタモタしてると、後ろの自分に向かって「早く押してください。」と急かす。
名簿は窓口の机の上、このオトウサンの真ん前にある。
目の前のオトウサンをドケて、ハンコを押せというのか!
オジサンは焦ったのか、なかなかカバンから印鑑を出せない。
別に後がつかえているわけでもないから、誰にも迷惑は掛からない。
更新と違って、再交付は空いていた。
役人って、本当に自分の都合しか考えないんだな。

相手は人だ。
アンタは毎日ここで同じことばかりしているが、初めて来る人もいるのだ。
アンタはハンコ押しは得意そうだが、このオトウサンのように田植えはできるか、稲刈りはできるのか、トラクターは乗れるか。百の仕事が出来るから百姓と言うんだぞ!
など、このオトウサンが農家かどうかもわからないのに、そう思ってしまった(笑)。
久しぶりに腹の立つ役人を見た。二人も。
一通りの説明を受けたら「それでは、お帰りは気を付けて!」
なんだか、みな、来る時も運転して来たかのような口ぶりに聞こえて、イヤミだなと思った。

帰り、売店でジュースを買ったら100円玉を落として、運悪く自動販売機の下に入ってしまった。
売店のオバチャンに訳を話すと、黙ってモップを貸してくれたが、そこに100円が見えているのに、なかなか引っ掛からなくて取れなかった。
あきらめて「どうもありがとうございました。」と返しに行くと、黙って受け取るオバチャン。
「大丈夫でしたか?取れましたか?」の一言も無いのか。
ここの人たちには感情が無いのか。みなロボットか。なんだか別の惑星に来たかのように思えた。

前来た時は親切な人もいた。
たまたまそんな人たちに当たっただけだと思うが、なんだかとても気分が悪かった。
帰り道、代わりの財布を買いに寄った店で、運転から開放された妻が宝くじを買っていた。
ヘンな人には当たるが、こういうのには、なかなか当たらないんだよなぁ。二人とも(笑)。

 


 

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